長年海を漂った流木か、高山で立枯れた樹木のようなホワイグレー色。ここのユーカリ並木の圧倒的な重量感に思わず僕は息をのむ。手で触れれば冷んやりするが耳を充てるとそうでも無い。そして特に何も聞こえない。そんなものかとまた芝生を先に進むと、一気に視界が拓けてスワン川沿いのパースの街並が一望出来る。ポンポンと空に浮かぶ羊雲がどこまでも続く。これからキャシーと行くワイルドフラワー・フェスティバルを何よりも楽しみにしていたのは僕で、それに浮かれてキャシーへのブーケをうっかり買い忘れた。この話をいつもの花屋の店主にしたらきっと笑われるだろう。おもむろに振り返ると、笑みを浮かべながらこちらにゆっくり歩いて来るキャシーがいた。後ろ手に持ったオレンジのローズブーケが少し見えて、わたしはまた浮かれた。