窓辺には赤やピンクの花が咲き誇るが、高冷地にも意外に多い羽虫をゼラニウムは寄せ付けず、住まいを彩る理に適った生活の知恵が、カフェでくつろぐ僕達のようなツーリストの目を楽しませてくれる。オープンテラスで燦々と日射しをあび、少し冷んやりと乾いた風が、テーブルの上に置かれた一輪挿の黄色い小花をそよそよとなびかせる。そんな気持ちの良いシチュエーションのブランチ時に、白ワインの4杯目をついつい注文してしまった僕の頭もそろそろなびいてきた。何をしにきたんだと言わんばかりの鋭い視線をキャシーは僕にあびせる。僕は苦笑いしなが手元に置いてある白バラ“アバランチェ”のブーケに助けを求める。勿論、花は何も言わない。空気をかえようと、目の前にそびえるヨーロッパ最高峰モンブランを一気に見上げた。視界に収まり切らない雄大なモンブランの山系を見上げすぎた僕は、キャシーのキュートな大笑いを引き出した。そう、椅子ごとひっくり返ったのだった。